ガイドナイフの点検
(医療機関向け)

ガイドナイフ使用上の注意事項です。

◇ 術前の目視検査
私は手術前に必ずガイドナイフの目視検査を行っています。
1) ガイド部と刃部の接合部に亀裂、折損はないか?
2) 刃こぼれはないか?
3) 刃は摩耗していないか?
 ガイドナイフの手入れの良否が手術の成否に直結すると考えるからです。
 また、これらの不具合は慎重に器具を取り扱うことで未然に防ぐことができます。

◇ ガイド部と刃の接合部の亀裂、折損

器具の落下事故が最大の原因です。
 ◆ ガイドナイフはステンレス鋼製で非常に堅牢ですが、誤って落下させるとガイド部の根元に亀裂がはいる可能性があります。
 ◆ もし亀裂を見逃して手術を行い、ガイド部が折損して内部に迷入すると摘出は非常に困難です。
 ◆ 手術器具の洗浄、滅菌などに際して落下事故が起きたら、直ちに拡大鏡で破損の有無を確かめる体制作りも必要です。
 ◆ ガイドナイフは耐腐食性のステンレス鋼製ですが、組成の異なる金属製品と長期間接触させると錆が発生して易損性となるので注意が必要です。


◇ 刃こぼれ

刃こぼれの主な原因は2つあり、手術器具同士の衝突でおこります。

第1は手術中に他の器具と衝突する場合です。
右図はその一例で、小切開でばね指手術を行っているところです。
皮膚を保護するための筋鉤にガイドナイフが衝突しています。
 第2は器具の消毒や洗浄の際におこります。他の医療器具と一緒に洗浄すると必ず刃こぼれしますので注意が必要です。
右図は手術で使用した器具を薬液消毒しているところです。このあと超音波洗浄になりますが、ガイドナイフなど最初から他の器具とは別に扱います。
当院では手術後、小型超音波洗浄器でガイドナイフだけ単独で洗浄しています。その後、直ちにシリコン・チューブを装着してから手術セットを作ります。

◇ 刃の摩耗

経験上、連続で数十回以上ばね指手術をしてもガイドナイフの刃は摩耗しません。
器具のめずらしさから、ガイドナイフで紙を切ると刃が摩耗して切れなくなるので注意が必要です。
昔から布切りバサミで紙を切ると刃が切れなくなることが知られています。紙に含まれる炭酸カルシウムはアルカリ土金属で非常に固いからです。同様にガイドナイフで紙を切ることも禁忌です。
刃を真上から観察すると、刃こぼれや刃の摩耗を調べることができます。
上:研磨が良好です。
下:刃が摩耗した区間は白く光ってみえます。また刃こぼれの場合はこれよりも限局的に狭い区間が白く光って見えます。

◇ 腱鞘切開刀の研磨(参考)

  ○ 油砥石などで切開刀を自己研磨すると、ガイド部の接合部が損傷して非常に危険です。
     それを経皮的ばね指手術で使うと、ガイド部が折れて深部に迷入し手掌内異物となります。
  ○ 刃こぼれや摩耗が見つかった場合、私は販売店に研磨・修理を依頼しています。


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