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 ある日の手術風景 - その3-
症例番号

1 環指 術後7日で創治癒し機能的にもほぼ完治 【LURT中にガイドを横振り】
環指 LURT+腱鞘切開 を2回施行した症例
環指 術後7日で機能的にもほぼ完治 【LURT中にガイドを横振り】
示指 術前にPIP関節は平らに伸びない 【LURT中にガイドを横振り】
母指 c型ばね指
母指 b型ばね指
中指 A1腱鞘にガングリオン合併 【LURT中にガイドを横振り】
手根管 手術開始後1分40秒で横手根靱帯の切開完了(超短時間手術)
中・環指 2指のばね指だが3分56秒で手術は終了 【LURT中にガイドを横振り】
12 【雑感】 【LURT中にガイドを横振り】→ガイドナイフの優れた特性



【雑感】LURT中にガイドを横振り (ガイドナイフの優れた特性)


◎ はじめに

 ガイド部はその構造上、切開刀先端で横に突き出ており、エコー検査で容易に描出できます。

 LURT試験とは腱鞘切開の直前に、ガイド部の位置を確認するための作業です。

 本日のテーマのガイドを横振りは本来のLURT試験の「変化球」と言えます。。
 ガイドを左右に振りながら観察すれば、正しい位置にセットされたか否かが判断できます。
◇ ガイドナイフの名称は、「ガイド=案内役」がその由来です。

◇ ガイド部(ガイドナイフの部位の呼称)は切開刀(メス刃)の水先案内人と言えます。

◇ ガイド部はA1腱鞘の内面を滑りながら、切開刃を正確に誘導します。

◇ 腱鞘切開に先立ち、ガイド部はA1腱鞘の内面に引っかかっていなければなりません。

◇ ガイド部が正確にセットされたことを確かめる手技がLURT試験なのです。

◇ 「ガイドの横振り」はLURT試験にお墨付きを与えると言っても過言ではありません。

◇ もしガイド部の位置が不適切であれば、「ガイドの横振り」が成立しません。

◎ 【LURT中にガイドを横振り】をテーマに設けた理由は?

 ・ ガイドナイフの優れた機能を一層深く理解していただくことが目的です。

 ・ 実際に、手術中にその手技を行っています。

 ・ これらの映像をご覧いただければ「ガイド部はただ者ではない!」とご理解いただけます。

 ・ さらに「ガイドナイフはただ者ではない!」ともご理解いただけると思います。

1.LURT試験は「2mm皮膚切開によるばね指手術」の核心となる手技です。

2.実際の手技は ①切開刀を軽く吊り上げる ②エコーでガイド部を観察 の両者をさします。
   → この操作により ガイド部を腱鞘トンネルの中央に移動させることができます。

3.切開刀を吊り上げる代わりに左右に振ると、ガイド部はどう動くのか?を観察しました。
   → 下の図で概略を説明します。


ガイド部が腱鞘から外れないように注意しながら、a→b、b→aに移動させることができます。
この操作で腱鞘が傷つくことはありません。


 ・ガイド部が腱鞘下に差し込まれました。
 ・どちらも腱鞘の内面に接触しています。
症例3(#2373)のクリップの合成写真です。
モノクロのエコー写真(インセット)に白く輝くガイド部が映し出されています。

 a、bはそれぞれ左のイラストに対応しています。




◎ 当院で開発した「2mm皮膚切開によるばね指手術」の特徴を列記します。

1.皮膚切開は正に2mmで非常に小さいく、また創縁の挫滅もありません。

   → 手術の翌日には水道水で手を洗えます。

   → 術後の創閉鎖も非常に速やかです。

2.腱およびA1腱鞘に隣接する皮下組織(皮下脂肪)がほとんど傷つきません。

   → 腱と皮下組織がほとんど癒着しません。

   → 術後の通院リハビリは不要です。

3.腱およびA1腱鞘を露出する必要がない。

   → 「盲目的手術」または「経皮的手術」と呼ばれます。

   → もし腱を引きずり出せば(癒着剥離)滑膜は傷つき一層癒着が進みます。

4.メスは使用しません。

   → 専用に開発したガイドナイフで腱鞘切開をします。

5.エコー装置は必需品です。

  → ガイド部が正しい位置にセットされたことを確認するために使用します。

  → この確認操作をLURT(Lift Up Resistance Test)と呼びます。
      また、「吊り上げ抵抗試験」を意味します。

  → LURTにより、目で見ながら切開するのと同じ効用があります。

  → LURTにより、神経・血管損傷はありません。

  → エコー装置は、漁業における魚群探知機と同じ役目をはたします。


◎ 「盲目的手術」の名称について

  1.盲目的手術とは「目を閉じて行う手術」の意味で、医学論文でも使われてきました。

  2.ただし「目を閉じて行う...」は比喩であり、実際には切開創が小さくて内部が見えない手術を指します。

  3.医学界では身体への侵襲が少ない「小さな皮膚切開による手術」は時代の要請でもあります。

  4.そして「小さな皮膚切開による手術」を的確に形容するための医学用語が「盲目的手術」です。

  5.「2mm切開ばね指手術」は正しく「盲目的手術」であり、時代を先取りした手術方法と考えられます。

  6.近年の医学界では「盲目的手術」の替わりに「経皮的手術」が使われますが、また混乱も生じています。

  7.「2mm切開ばね指手術」は「経皮的手術」である...と言っても、内容を理解できる人は皆無です。

  8.2mm切開ばね指手術は標準ばね指手術(2cmの皮膚切開)に比べて非常に優れています。

  9.「盲目=モウモク(読み)」は従来から正当な日本語として使われてきました。

 10.「盲目=めくら(意味)」をふりがなに充てる習慣が根付いてから侮蔑(差別)用語に分類されました。

 11.「盲目的手術」を医学用語として使うと手術内容を的確に伝達できるのですが、残念です。

 12.必要により本文で「盲目的手術」を使用しますが、視力障害者に対する侮蔑の意はありません。



◎ 皮膚切開の大きさが2mmのばね指手術について

  1.2mmの皮膚切開によるばね指手術は、以前は「盲目的ばね指手術」と呼ばれていました。

  2.その意味は、皮膚切開が2mmでは内部にあるA1腱鞘が見えないので「目をつむって行う手術」に等しいとの比喩的表現です。


日本語における「盲目」の意味は上で触れましたが、英語の同義語「BLIND」はもっと広いで使われます。
 英語辞書(SOED 5th ed)にはBLINDの意味として13の記載があります(一部省略)。

 BLIND
  1.Without the sense of sight: 視力障害(者)

  2.Enveloped in darkness: 暗闇に包まれること、目の前が真っ暗になること

  3.Lacking discernment or foresight: 分別力や洞察力の欠如

  4.Covered or concealed from sight 、視界を妨げて見えないようにするの意

  5.・・・・・

 13.・・・・・

 英語圏ではこれらの広い概念を表す語彙として日常的に用いられています。

 《参考》 Wikipedia のTouch typing の項目にはBlindly の用語が2回使われています。


 日本語では「盲目」は視力障害者の意味だけに特化されて差別用語扱いとなりました。
 Blind operation(盲目的手術)は、直接目で見ないで行う手術のことで、医学界では今でも時々遭遇します。
 
 2mm皮膚切開ばね指手術 → 盲目的手術 (差別用語のそしりは免れませんが意味が明瞭)
 2mm皮膚切開ばね指手術 → 経皮的ばね指手術 (隔靴掻痒)



◎ 当てずっぽうの手術とは?

  従来から「盲目的ばね指手術」または「経皮的ばね指手術」は当てずっぽうの手術と考えられています。
  
  「2mmの皮膚切開ばね指手術」は「盲目的ばね指手術」に分類されます。
  従って「2mmの皮膚切開ばね指手術」は「当てずっぽうの手術」との批判を時々耳にします。

  上記で説明したとおり、
  ガイドナイフとエコー装置の両方を組み合わせることにより、
  「2mmの皮膚切開ばね指手術」は当てずっぽうの手術ではないのです。
  さらに、「2mmの皮膚切開ばね指手術」は直視下手術と同等の確実性があるだけでなく、
  直視下手術(標準手術)とは比べものにならないほど侵襲の小さな手術となります。
  手術後の機能回復も直視下手術(標準手術)よりも早いことを経験しています。




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